【活動データ】メンバー:KS,KI,セベレイ,ニコライ
晴れ 15~35m/s -8~-25℃
タイム18:05 距離17.6km 上り2,304m 下り2,552m カロリー6638kcal
20:55大石茶屋~03:36砂走館(ツエルトをかぶり暴風が和らぐのを待つ)05:06~06:09赤岩八合館~08:38富士山(御殿場口)~9:50富士山(剣ヶ峯)~10:59赤岩八合館~13:49大石茶屋~太郎坊15:10
【行動概要】
ロシアの友人ニコライと富士山に初日の出を拝みにいってきました。
31日の夜9時に太郎坊を出発して無事に登頂することができました。
初めはロシア人2人を含めて四人でのんびりと登ってましたが、高校生のセベレイが高度障害が出てきてほとんど進めなくなりました。ヤマテンでは頂上で-20°C 35㎧の予報。標高3000M地点にある小屋でも風が強くて登山に来ていた人たちが10人ほどいましたが2/3は諦めて引き返して行きました。ニコライも息子を連れては無理と思い引き返す決断をしました。そんなこともあり小屋の出発がかなり遅れ、剣ヶ峰到着は10時ぐらいになりました。それからぼちぼち降り下山は翌日の午後3時、18時間の山行となってしまいました。日本での登山で経験で最長記録になってしまいました。でも富士山頂でのご来光も見ることができて、満足とは言えずともまあまあの登山でした。
【活動メモ】
*福岡から13時間で富士吉田着。休憩後31日昼12時、太郎坊トンネル横に車を駐車
*31日11:30時太郎坊出発~12:40大石茶屋到着。
*12:40~14時ベースキャンプ設営
*14時~15時 H1700m まで散歩
*16時~20時仮眠、21時大石茶屋出発
*H1700m より、雪の上を歩きだす。
*H1950m 22:20クラストした雪面で少し傾斜が増してきたためクランポン装着。
*H3100m 7合5勺砂走館でニコライたちと別れる。コンテで進む。-11℃・時折30m/s近くの突風。快晴視界良好・地吹雪。登山者10名ほど。2/3は引き返した。
セベレイは高度障害で調子が悪くここまでとする。高校生でにもかかわらずよく頑張った。さすがボルダリング全米14位! ニコライが付き添い下山。へたくそな自分の英語とロシアなまりのニコライの英語、そのうえあの気象コンディションではまともなコミュニケーションが取れず、ほんとは登りたかったのだろうが悪いことをした。
*H3100m 7合5勺砂走館で突風が和らぐのを1時間ほど待つ。午前五時出発。この時点で、山頂からのご来光はパスする。
*H3350m 6:50日が昇る! 視界が効いて。一気に気分は上々。突風は5分おきくらいに襲い、そのたびに台風姿勢を取る。パチンコ玉ほどの氷の塊が飛んできて顔が痛い。
*H3000m以上でも青氷はなく、クラストした雪面。全体の3割ほどが特に堅かったがクランポン・アックスはよく効いた。特に雪面固く風も強い区間(夜明け前の1時間ほど)ロープ使用。手摺の鉄杭(太さ18㎜)に30㎝スリング+カラビナ1枚でタイオフし50m置きにランナーを取る。風で体がよろけながらも安心して登行できた。ダイナミックランナー+コンティニアンスで進めば25m/s以上ほどの風でも不安なく進める気がした。
*ワートホグ(コング25㎝)を持って行ったが残置杭を活用でき使用はしなかった。しかしながら状況は逐一違うので、念のため持っていったがいいだろう。スクリューチューブは雪面の下が火山礫のグランドであるため絶対やめた方がいい。スペクター(BD)もよく効くだろう。
[25㎝ワートホグx2+スペクターx2=BestChoice]
*日が昇ると気温はぐんと上がり突風も収まってきた。
*H3500mくらいから高度障害でスピードがぐんと落ちる。頻繁に高い山に登れない九州人の弱み。
*3時間30分遅れで富士宮稜線到着。登山者2人発見。
*9:40剣ヶ峰到着! 快晴。1分間隔で20m/sくらいの突風。地吹雪で視界は時々悪くなる。
*10時下山開始。視界がきくのでルート上は歩かず、雪面を真っ直ぐ下る。クランポン効き気もちよく下れる。
*途中、方向誤り、東にかなりずれてしまった。
*H2800mからシリセードを試みる。標高差で300mほど滑ったが時折パチンコ玉くらいの礫があり、シェルが傷みそうなのでやめた。あえてする必要もない。アックスがなければ止まらない傾斜とμ。こけてアックス離したらやばい状態になるのは必至。H3000m~頂稜は岩が出ており滑るのは危険。
*顕著ではないが、頂上から裾にかけスカートのフレアー状の緩いひだがあり、尾根部は風で雪が飛ばされ拳大から人の体大の岩が出ている。グランドは氷化しクランポン無しでは動けない。ただ、岩をステップやホルドにできる安心感はある。一方沢部(といってもとても緩くカール状)は、飛ばされた雪がたまり、岩は出ていない。H3500mから最下部まで途切れることのない雪面。滑りこけたらあっという間に裾につくと思うがコントロールを失えばあの世まで滑っていくだろう。
*御殿場ルートはテントを張る場所は小屋の周辺に限られる。しかし、風を考えれば、設営が困難な場合が十分にある。雪洞は小屋周辺の限られた吹き溜まりしかなくうまくいっても2人はいれる程度の半雪洞になるだろう。もしどうしてもご来光が見たいのであれば、前日入山、雪洞を掘ってH3000m前後で仮眠ののちアタック。または、前日までにある程度の高度純化をしてのワンプッシュが望ましい。
*富士宮ルートや富士吉田ルートは要所に小屋などがあるみたいなので、そちらのルートがベターかも。ただし、冬型の気圧配置なら気象条件に限ると、御殿場ルートが最も条件はいいだろう。
*H2800mからシェルジャケットの上からへビィウエイトのダウンを羽織ったが、熱くもなく寒くもなくちょうどよかった。
*H3000m 以上ではテムレスだけでは、休憩時に指が冷えたので、ファイントラックのミトンと交換したらOKだった。靴はフェルトインナーファントムで問題なし。下山時も問題なし。
【感想】
今回は、標高差2500m以上、高度3700mを超える地点までのワンプッシュという特殊な登山でした。しかも夜間の行動で時間も18時間と異例の長さです。コンディションも頂上付近は風速40m/s・気温‐25度というヤマテンの予想での計画でした。自分の予想では、きちんと安全対策をし時間をかけて登れば必ず行けるとは思っていまっしたが、地形や風といった自然条件よりも、行動の特殊さが一番堪えました。標高1800mの山は1年ぶりというのが大きな原因だと思います。少なくとも1か月以内には3000m超の標高はクリアしておくべきだと思います。
ロープの使用に関する所感ですが、富士山は滑落事故が異常に多く発生しています。実際、僕らの下山途中お一人が滑落で死亡し、1週前も一人死亡しています。それは、富士山特有の気象や地形の条件も確かにありますが、最大の原因は、一級の冬山であるはずなのに、アプローチの困難さが無い事が原因で、ハイキングの延長で登っている人が多いからだと思います。僕の感覚では行動時間の長さと高度障害が出るような高さ以外は、北アルプスのようなシビアさはあまり感じません。
コンテで行動することは、ソロならともかくパーティとして行動する場合は、富士山でも確実に安全性は上がると思いました。ただし、低温強風下でのロープ操作ですから、それなりの経験がなければ意味はなさないと感じました。ドライな岩登りのみのロープの基本操作がわかっていたくらいでは、分厚いグローブや着ぶくれのシェルつけていては対処できないと思います。
今回は、視界や積雪の状況などコンディションには恵まれていましたが、これが、視界が効かない中だったら、GPS頼りとなり、強風低温下ではかなりしんどい状況だったと思います。
富士山の現場状況をあまり理解しないまま、登山口にアプローチした僕らは、そこにいた一見、『玄人っぽい方々』と5組ほど会いました。いずれも「今日は暖かく、楽勝」「御殿場ルートがご来光登山には一番」「7~8合目の小屋周辺しかテントは張れない」・・・などの情報を仕入れました。しかし、それぞれの成功体験に基づく主観に過ぎず、あてにしない方がいいと、改めて認識します。所詮、登山は自分の力と経験のみで行動する前提でなければ、刻々と変わる気象をはじめとする自然条件、想定外の要因などは克服できません。
こうして帰路の車の中で、ジャズを聴きながらぬくぬくとパソコンに向かって記録をつけている状況で、たった18時間で終わった登山は、これまでの冬山登山と比べるとかなり異質で少し物足りないものでした。
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