No.830 硫黄尾根(ソロ)

【硫黄尾根のプロフィール】

槍ヶ岳と言えば北鎌尾根が有名で、ある種ヤマ屋の目標ともされている。その傍らで赤く荒々しい出で立ちで「そんなメジャーな尾根より僕を登ってごらん」と挑発している尾根だ。北鎌尾根より長大で、ルートの複雑さとエスケープも難しいことから槍ヶ岳へのルートでは最も難しい尾根とされている。

阿蘇鷲ヶ峰の北尾根冬季の登攀・大山北面のバリエーションルートの登攀・大山主稜の縦走を繰り返し1日中続け、それを4~7日間連続するようなイメージ。複数登攀ではロープによるコンテやスタカットである程度の安全は確保できるが、ソロではただ一度の失敗も許されない。

岩・氷・雪稜・ルートファインディング・生活技術・体力・精神力・危険察知のセンスと運。小手先の技術だけでは死につながり、総合的な力と経験を要する。

【DAY1】

快晴 -2~18℃ 0~10m/s 10時間

8:00葛温泉ゲート~9:56○下 高瀬ダム ○上10:22~11:37林道終点(ここまで除雪)~12:31名無小屋~15:14湯俣~16:05尾根取り付き~16:53尾根(1550m)~17:58泊地(1680m)~18:30テント入り~21:30就寝

【DAY2】

快晴 -8~18℃ 0~15m/s 11時間

5:05起床~6:54発~10:19硫黄岳前衛峰群P1~11:17 P3(ラッペル)11:59~14:08 P2246m~14:41小次郎のコル~17:47硫黄岳下ジャンクション2400m~18:40テント入り~21:00就寝

【DAY3】

快晴 -12~18℃ 0~15m/s 8時間

4:55起床~6:55発~8:15硫黄岳~8:50硫黄台地2511P~9:03雷鳥ルンゼへの懸垂下降点~(ラッペル)~9:40雷鳥ルンゼ懸垂下降点~(ラッペル)~(クライムダウン)~(トラバース)~11:02尾根~12:12南峰2459P~13:31赤岳前衛峰群P1・P2の巻き14:15~P2~15:10P3とP4のコル(泊)~16:04テント入り~21:00就寝

【DAY4】

 快晴 -10~18℃ 0~15m/s 9時間

泊地6:30~7:30 P4懸垂8:08~8:41 P7直下雪崩発生8:45~10:02赤岳主峰群P2東尾根の肩~13:23白樺台地~15:35西鎌尾根直下2640m

【DAY5】

 快晴のち曇り -6~20℃ 0~18m/s 11時間

3:58泊地~5:22西鎌尾根~5:42左俣岳~8:19千丈沢乗越~10:02槍平小屋~12:42白出小屋~15:53穂高平小屋~15:03新穂高

⤴ 1日目 ダム湖の向こうの硫黄尾根


⤴ 1日目 湯俣のつり橋


⤴ 1日目のテン場はまだ樹林帯の中

⤴ 2日目 左端の丸っこいのが硫黄岳前衛峰群P6で右端の一番高いところが硫黄岳山頂。そしてこれらの間の一番低いところが小次郎のコル。


⤴ 2日目 硫黄岳前衛峰群P3の懸垂

⤴ 2日目 硫黄岳前衛峰群P6のピークで

⤴ 2日目 硫黄岳へと続く急峻な雪稜。これを登る。腐れ雪でボッチダブルラッセルの連続。

⤴ 2日目 さっきの雪稜

⤴ 3日目の朝 硫黄岳直下でキャンプ。雪庇をよけて斜面を切ってテントを張ったが傾斜が残ってしまった。ロープで確保。

⤴ 3日目 硫黄岳から見た硫黄台地とそれに続く赤岳主峰群

⤴ 3日目 雷鳥ルンゼを1ピッチ懸垂した後で、懸垂支点が見つからずクライムダウン中。

⤴ 2日目 正面が雷鳥ルンゼ。南峰への登攀中に振り返る。

⤴ 3日目 南峰の下り。冷蔵庫大の岩もぐらぐら。すぐ下のとんがりが赤岳前衛峰群P2、その先のぽやぽやがP3、P4~P8があり中山沢のコル。そしてその先が赤岳主峰群、そのまた先に西鎌が見える。スカイライン右端のなだらかな山稜が双六。先はまだまだ長い…。

⤴ 3日目 いたるところで小規模な表層雪崩が発生した。どの雪崩もメカニズムはほぼこうだ。

根雪の部分はほぼ雪崩尽くしている。残った根雪の部分はもう雪崩れず、GWをはさみながら溶けてなくなっていく。この残った根雪の上に3日前に降った新雪が10~20cmつもり、それが表層雪崩となり昨日から今日にかけての高温で一気に雪崩れている。規模は小規模で起点の幅は2~30m、層の厚さは10~20㎝、さ~っと音なく流れ50~100m下で自然に止まる。

起点付近で巻き込まれても死なないと見た。

⤴ 3日目 P1・P2を湯俣側を巻き、P3の登り。P3を越え、P4手前の痩せたコルでビバーク。

⤴ 4日目はいきなりP4の雪壁の登攀から始まり、P4の懸垂。ここで懸垂方向を間違え登り返すことになる。硫黄尾根はこのルートの複雑さが難しいところ。この懸垂で、完全に退路は断たれた。どんな困難があっても、もう進むしか道はない。

⤴ 4日目 P5の登りの途中から硫黄岳南峰、P4を振り返る。

⤴ 4日目 P5へは鋭くとがったピークへ続く雪壁を登ることにした。この雪壁途中で雪崩に流され滑落。左の岩塔下まで50~80m滑落する。

両手のピックが刺さったままダブルアックスの姿勢で雪面ごと流された。岩塔横でいったん止まりかけたがまた加速。そこで滑落停止姿勢を取り、雪崩の下のクラスト面をピックがとらえスピードを落とすことができた。GoodJob!!

⤴ 4日目 滑落直後 流された雪崩のデブリの上で。下まで落ちんでよかった…。写真を撮る余裕もあった。

⤴ 4日目 滑落後、別な枝尾根に登りあがったらいきなり槍が正面に見えた。

⤴ 4日目 赤岳主峰群Ⅲ峰(主峰)から。Ⅳ峰・Ⅴ峰とあり、その先の木のぽやぽやが白樺平。見た目そんなにないが、実際はキレッキレのナイフリッジ。2時間以上かかった。

⤴ 4日目 Ⅴ峰の先のナイフリッジがヤバかった。

⤴ 4日目 右を見ても左を見ても、斜面という斜面は雪崩れだらけ。

⤴ 4日目 Ⅴ峰の先のナイフリッジを越え安全地帯?の白樺平まであとわずか。よれよれで上る。

⤴ 4日目夕方 白樺平を越え西鎌尾根直下の稜線でキャンプ。左側は巨大雪庇が張り出している。ここから30mほど先でクレパスに落ちた。ここから見ても落とし穴は全然わからない。ましてや夜明け前のヘッデン行動中だったので不意打ちを食らった。

⤴ 5日目 クレパスから脱出後の槍は白んでた。

出発して30m程で突然体が宙に浮く。ドスン! また雪崩?と思いきや今度は少し違う。体は動いていない。クレパス状の穴に落ちたみたいだ。着地した際、岩角で右膝をしこたま打った。昨日の肉離れといい今日のこれといいなんで右ばっかり…。しばらく痛みでうめいていた。

落ち着いて恐る恐る右足を確かめるが、壊れてはいないようだ。少し安心する。さて何が起こったのか?どうやら雪で隠れた雪庇の割れ目に落ちたようだ。暗いうちから行動しヘッデンの光だったので、よく見えなかった。壺状の空間で地表には手が届かない。上まで3m程あるようだ。ザックを下ろしロープを出してザックに結ぶ。空身のダブルアックスで雪壁を登る。ザックを回収し抜け出した。外はもう白んでいて1時間ほどロスした。上に出て少し登ると横穴が見えた。巨大な雪庇が折れ、その上にまた雪庇ができそれを踏み抜いたようだ。上からは全く分からなかった。

⤴ 5日目 落ちたクレパスから20mほど登ると、クレパスから続く横穴が開いていた。巨大な雪庇が折れ、そのまた上に薄い雪庇ができ、穴をカモフラージュしていたのだ。

⤴ 5日目 槍へと続く西鎌尾根。達成感がわいてきた。

⤴ 5日目 千丈沢乗越しから飛騨沢を一気に尻セードで下り槍平に到着。しばらくしての南沢のデブリ。右俣谷沿いは大規模なデブリだらけでひやひやだった。

白出沢出会いを過ぎ林道に乗ってからもラッセルとデブリ越えが続き、ヘロヘロで夕方、新穂高についた。



山岳冒険倶楽部 星と焚火

私たちはキャンプ、ハイキング、ロッククライミング、 山菜取り、紅葉狩り、探検、海外登山・・・ 山と森と自然から授かることのできるあらゆる恵みを いろんな方法で楽しみます。 皆さん私たちと一緒に山に出かけましょう。

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